【Vol.644(2022.12.02)】高1生の退塾を防ぐ取り組み(前編)

前回、「中3継続率をアップするために必要なこと」というテーマでお伝えいたしました。

今回は、その続きとなる内容です。
前後編の2回に分けてお届けしたいと思います。

さて、中3生が「高校からもお世話になります」と言ってもらえると、
本当に嬉しいですし、ありがたいことです。

一方で責任重大ですし、身の引き締まる思いにもなります。

3年間、充実した高校生活を送っていただくためのサポートや
大学入試に向けた受験サポートを行なっていくことになります。

しかし、「高校継続してくれたのはいいが、高1の途中で辞めてしまった」
というケースも少なくないようです。

「高校生活が思った以上に忙しい」「学校のことで精一杯」「通塾する目的が薄れてしまった」
など、辞める理由は色々あると思いますが、表現こそ違えどつまるところ
「通塾の優先順位が下がった」ということができるでしょう。

つまり、基本的にはこちら側の力不足だと捉えるべきです。

こうした事例をふまえ、高1生に対して弊塾で特に意識をしているのが、
やはり先ほども述べた「高校生活が始まっても、通塾の優先順位を下げさせない」ことです。

ただし、これらも即効性の高い魔法などはありません。
いたって普通の取り組みです。

「これをやれば高校生が辞めない」という明確な因果関係までは示せませんが、
少なくとも弊塾では今年度も昨年度も高1での途中退塾はありませんでしたので、
貴塾でも取り組んでみられる価値は十分にあると思います。

取り組み(意識している点)は、下記の5点です。
今回はこのうち(1)~(3)について解説してみたいと思います。

(1)土・日無料勉強会の実施
(2)1on1セッションの実施頻度を増やす
(3)保護者さんへのアプローチ
(4)他学年の生徒さんより手厚いサポート
(5)週1回の生徒さんへのアプローチ

(1)土・日無料勉強会の実施

弊塾に通う中学生は、定期テストの前週の土・日に無料勉強会(自習会)を実施しています。

高校生も同様なのですが、継続して通ってくれている生徒さんたちは
中学生の時からこのスタイルに慣れていますので、
高校生になっても違和感なく勉強会に参加してくれます。

「テスト前の土・日は塾で6時間勉強するものだ」「テスト期間中は塾に自習にいくものだ」と、
いい意味で疑うことなく「当然のこと」と受けとめてくれているようです。

「高校生からは、教室に来させなくてももう一人で(自律的に)勉強させるべきだ」
という考えもあるでしょうが、実際は一人で勉強しているようなものです。

こちらは「勉強する空間」を提供しているだけという感覚ですかね。

高校生がいらっしゃる塾さんは、中学生同様、
テスト前の土・日に勉強会を実施されてみてはいかがでしょうか。

中学と高校とでテスト期間がズレてくると思うので、
シーズンになると毎週のように開催することになるため、運営上の負担にはなります。

しかし、負担以上の見返りは十分ありますよ。

自分一人で行うのではなく、学生講師やスタッフに助けてもらうなどと、
負担軽減できる形を作るのもポイントですね。

(2)1on1セッションの実施頻度を増やす

弊塾では、定期的に教室長が生徒さんと1on1のセッションを行います。

時間は5~10分程度と短く、
「面談」というガッツリなスタイルではなく、「雑談」に近いイメージです。

できるだけ気軽に話してもらえるように、対面ではなく、隣に座って話すことが多いですね。

非受験生の場合、中3や高3に比べて実施頻度は減りますが、
高1(特に1・2学期)に関しては受験生並みの頻度で行うように心がけています。

高校に入ったばかりで環境が大きく変わった日々は、生徒さんにとってストレスの連続です。
ここをおろそかにせず、しっかり伴走しておくことが大事だと思います。

新しい暮らしの中で体力を消耗しきっている状態の生徒さんも多いですから、
学校生活や悩みなどを聞き出したり、励ましたりという機会を持つようにしています。

その点は中1に接する感覚と近いのかもしれません。

また、中学の時には定期テストで普通に80~90点取ってきた
「そこそこできる」生徒さんであっても、
同じような学力層の生徒さんが集まっているのが高校です。

例えば20~30点など、勉強のやり方次第では、
中学時代には考えられなかったような点数を取ることもあります。

加えて高校の先生によっては、
平均点が30点になるような難易度の高いテストを作る方もいらっしゃいます。

平均点が30点ということは、単純計算でクラスの生徒の半分は30点以下だということです。

私たちからすると、そんなことがあるのは普通と言った感覚ですが、
これまで80~90点を取れていた生徒さんからすれば、
プライドがズタズタに引き裂かれた状態になり、自己肯定感は爆下がりします。

もちろん、生徒さんや保護者さんには、高1になる前段階で
「こういった状況になる可能性は誰にでもある」という話はしてあります。

そのうえで、実際にこのような事態になった場合にすぐフォローできるよう
1on1を行っておけば、生徒さんの精神的な安定剤としても有効でしょう。

(3)保護者さんへのアプローチ

保護者さんへのアプローチも、頻度を上げて行うことが大事です。

弊塾では、4月に学校が始まったタイミングで、
生徒さんの学校生活やご家庭での様子などを聞くようにしています。

特にその生徒さんがご家庭での第一子である場合、
保護者さん自身もすべてが初体験ですから、不安を抱えておられます。

そういった不安や悩みを吐き出せる場所を提供しておくことが大切です。

きっと保護者さんも安心していただけるでしょうし、塾への信頼感もアップするでしょう。

私はよく保護者さんに「高1生は、大きくなった中1生と同じです」とお伝えしています。

「お子さま中1になったとき、環境が大きく変わってものすごく疲れていませんでしたか?
あの状況と同じですので、まずは元気に学校に通えるサポートからお願いします。
睡眠時間をしっかり取らせてあげてくださいね」という感じです。

保護者さんも「なるほど、そういう感じなのか」と分かってもらえますよ。

こうした高校生活のスタート時における重要性は、
中3の時に高校入試説明会の中でも話すなど、早めに伝えることも意識しています。

定期テストでも教科数が増えますし、
先述した定期テストで急に点数が下がるケースについても事前に伝えています。

それでも実際にそうなれば、動揺される保護者さんも多いのです。

したがって、テスト後にも保護者さんへアプローチすることが大切だと言えるでしょう。

いかがでしょうか。

生徒さんや保護者さんが不安に思われる部分を想定し、
それに対して先行して対応しておくイメージだと理解してもらうと、分かりやすいと思います。

生徒さん、あるいは保護者さんが期待を膨らませて進学した高校で
楽しく3年間過ごしてもらうために、自塾としてどんなことができるか。

それを考えてみましょう。

きっと、「大学入試まで3年間お世話になろう」と思ってもらえるはずですし、
途中での退塾は減っていくのではないでしょうか。

次回は、後編をお届けしますのでお楽しみに!

【今回のまとめ】
・高1は、身体の大きくなった中1と思って接する
・生徒さんや保護者さんが不安に思う要素に先回りして対応する

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安多 秀司 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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