【Vol.722(2023.09.01)】文理選択、どうやって決める?

みなさんは文系出身ですか? それとも理系出身ですか?

また、ご自身が文理を選ぶ際にどんな理由で決めましたか?

先ごろ、この文理選択においてちょっと気になるニュースを見かけたので、
ぜひみなさんと一緒に考えてみたいと思います。

<文系と理系、共に決め手は「理系科目」、モチベーションの高さは理系に軍配>

東洋経済education×ICT
文系と理系、ともに決め手は「理系科目」、モチベーションの高さは理系に軍配 | 東洋経済education×ICT スタディプラス株式会社(東京都千代田区、廣瀬高志代表取締役)のStudyplusトレンド研究所などが文系と理系の選択に関するアンケート調査したところ、文理いずれも選択に...

「Studyplus」でおなじみのスタディプラスさんが高校生を対象に行った調査によると、

文系を選択した理由の1位はは「理系科目が苦手だったから」であることが分かりました。

加えて、「文系科目が苦手だったから」理系を選んだという意見は9位にとどまっています。

つまり、理系に比べて文系はネガティブな理由で選んでいる傾向が強いということです。

もちろん、文系科目が好きだから文系を選んだという高校生もたくさんいますが、

消去法的な理由で選ぶのはあまり好ましい状態とは言えません。

この状況下において、普段みなさんが生徒さんから文理選択のアドバイスを求められたとき、

どのように助言をしていますか?

必ずしも正解はないのでしょうが、少なくともテストの結果だけを見て、

「キミは理系(文系)科目の点数がいいから理系(文系)にしましょう」

というのは短絡的だと思います。

テストの点数が良いことと、その教科への興味関心の度合いは必ずしも比例しないからです。

確かに、テストで良い点数を取れる教科を好きになる傾向はあるでしょう。

しかし、「得意」と「好き」は違います。

例えば人より早く走ることができるけれど、特に短距離走が好きなわけではない、

というケースってありますよね。

仕事でも同じだと思います。

手先が器用だからといって、ものづくり系の仕事に就きたいと思うかどうかは別です。

このように、表面的な得意・不得意だけで文理選択を勧めるのは、

目先の定期テストや受験だけを考えるのなら良いと思いますが、

その子の将来にわたった視点で見たとき、ベストなアドバイスとは言えないでしょう。

そこで「じゃあどうアドバイスをすればいいの?」ということで、いろいろ調べてみました。

いろんな学者さんや教育家の方々が多様にお考えを述べておられましたが、

主流を占めていたのは、やはり「将来、学びたいことを基本にすべきだ」という意見です。

例えば経済学や法学に興味があるなら文系、

農学や工学、医学に興味があるなら理系、という感じです。

ところが現状って、これが逆になっている部分もあると思います。

「経済学に興味があるから文系を選ぶ」のではなく、

「いま文系だから経済学を選ぶ」という考え方です。

面談などで大学の希望進路を聞いても

「うーん、僕は理系だし理学部かな~」という生徒さんって多くないですか?

でも、そういうことじゃないですよね?

自ら進路の選択肢を狭めているというか、

理系だから理系学部「しか選べない」と思い込んでいるフシがあります。

大学の総合型選抜のサポートをしているとよくあることですが、

「自分は理系だから理学部」と言っていた生徒さんも、

本当にやりたいことを掘り下げて聞いてみると、

「社会の格差をなくせるような仕事がしたいです」って言ったりするんですよね。

それをやりたいなら、政策学系や社会学系じゃないですか。

ガチガチの文系です(リベラルアーツなどの文理融合系もアリでしょうが)。

もしこうしたミスマッチが、最初の文理選択のときに起きているのだとしたら、

あるいはテストの点数だけを見た「得意・不得意」だけで選んでいるのだとしたら、

さらに塾や学校の先生や親が、そういう理由でアドバイスしているのだとしたら……

私たちも、もっと長期的な視野でアドバイスすべきだと思います。

もし「好きだけど(教科学習としては)苦手」「好きではないけど(教科学習としては)得意」の

二択で迷うなら、「好き」を優先させてあげたいところです。

今は苦手でも、好きなら伸びる可能性は十分にあります。

逆に、今は得意でも、好きではないことに人はあまり努力しないので、

これから先の伸びしろには限界があるでしょう。

また同調査では、理系を選んだ理由として「将来のキャリアに有利そう」という答えも、

6位にランクインしていました。

これも一見、まっとうな考え方に見えますが、

やはり本質は「やりたいから」「好きだから」ではなく、打算的な理由だと言えます。

そもそも、学問の選択を「損か得か」「費用対効果」で考えること自体が悲しい発想です。

「学ぶ」ってそういうことではないと思います。

確かに、人生においては現実的な選択や、損得でものごとを判断すべき場面もあるでしょう。

しかし、中高生の時点で「これを学べば得だから」「理系科目の点数が良いからキミは理系」

というアプローチをしてしまうと、子どもたちも「そういうもの」だと思ってしまいます。

どのようにアドバイスするとしても、せめて私たちは全体や将来を俯瞰しつつ、

広い視野で選択肢を示してあげるようにしたいですね。


【今回のまとめ】
・文理選択、目先だけを見てアドバイスしない

・将来やりたいことを軸にした文理選択を

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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