【Vol.993(2026.03.27)】もう「何のために勉強するの?」とは言わせない!

「これを勉強したところで、実社会で何の役に立つの?」

教育関連の仕事に就いている人なら、
子どもたちからこの問いを投げられた経験は、1度や2度ではないと思います。

みなさんは、これまで何と答えてきましたか?

「将来の選択肢を広げるから」でしょうか。
「役立つかどうかで勉強の価値を測るものじゃないよ」でしょうか。
それとも「やかましい!つべこべ言わずにやれ!」でしょうか(笑)。

しかし、どう説明しても、生徒さんに心からの納得を届けるのは難しいですよね。

なぜなら子どもたちは、「今この瞬間の自分」と切り離された未来の話に、
実感を持ちにくいからです。

実際「どう役立つのか」が分かったところで、
「そうか!じゃあ勉強するぞ!」となる子なんて少数派だと思います。

そこで、ちょっと発想を逆転させてみましょう。

「学んだことが将来どう役立つか」を説明するのではなく、
「すでに自分たちの身の回りで役立っているものを、学問的にひもとく」という切り口です。

実は今回、これをメルマガのテーマにしてみたのは、
こんなニュースを目にしたからなんですよ。

<高校教科書にミセスやヒゲダン…でも音楽教師が「少年時代」推す理由>
https://www.asahi.com/articles/ASV3R4DW3V3RUTIL00LM.html

音楽の教科書に、人気アーティストの楽曲が多数採用されていることを報じたもので、
ここで「なるほど、うまいなあ」と感じた部分がありました。

Mrs.GREEN APPLEの「ダンスホール」という曲について、
「曲の途中で2回転調しているが、どのような効果が生み出されているか」と
考えさせる記述があるのだそうです。

「転調という知識を覚えること」から始めるのではなく、
誰もが知るアーティストの人気曲を題材にして、
「なぜこの曲はこんなにも盛り上がるのか」「なぜここで気持ちが動くのか」という、
すでに子どもたち体験している現象を出発点にしているんですよね。

このような問いが投げられると、生徒さんはまず自分の感覚を手がかりにします。

「ここで一気に明るくなった気がする」「サビに入る前に期待感が高まる」といった
主観的な気付きです。

そこから、「転調」という音楽的な仕組みを知ることで、
自分の感じたことが理論と結びついていきます。

つまり、「体験→疑問→知識」という順序で学びが進むのです。

これが従来のアプローチなら、まず転調とは何かを教えて、
転調が使われている楽曲を教える順番になっていたのではないでしょうか。

この構造は、他の教科にも応用できます。

例えば数学なら、「なぜこの動画はこんなに再生されているのか」という
身近な疑問から出発できそうだと思いませんか?

再生回数の増え方をグラフにすると、
直線的ではなく急激に伸びるタイミングがあることに気づくでしょう。

そこから比例・反比例、さらには指数関数的な増加という概念へとつなげられます。

最初に公式を教えるのではなく、
現象を観察することで数学の必要性が自然と出てくるのです。

英語でも同じことができると思いますよ。

スマートフォンの設定画面やアプリの表示、あるいはゲーム内の英語表現など、
日常の中には英語が溢れています。

例えば「Play」と「Start」の違いを考えさせてみるのは面白そうです。

どちらも日本語にすると「始める」という意味で使われますが、
動画や音楽には「Play」、ゲームの開始には「Start」が使われることが多いはず。

「Play」は「すでに用意されているものを再生する」というニュアンスで、
映画や音楽のように、内容が決まっているものを流すイメージです。

一方で「Start」は「これから何かを始める」というニュアンスで、動作の開始を指します。

これが分かるだけでも、生徒さんは腹落ちしやすいですよね。

国語でも、「なぜこの小説の一文は心に残るのか」という疑問から始めることができます。

例えば「メロスは激怒した」という書き出しはなぜインパクトが強いのかを考え、
そこから表現技法などを学ぶことができるかもしれません。

ちなみにネット上では「メロスは激動した構文」がちょっと流行ったことがあります。

走れメロスの冒頭部分をメロス以外の人やものに当てはめて書き換え、
おもしろおかしくするネットミームです。

そうやって遊んでみるだけでも、文章力は鍛えられますよね。

修辞や表現技法が単なる用語ではなく、
実際に機能しているものとして体感的に理解されていくはずです。

さらに理科であれば、「なぜメントスコーラは爆発するのか」なんて
考えてみるだけでも面白そうです。

社会科でも、「なぜこの商品は売れているのか」「なぜゲームに課金したくなるのか」という
疑問から、経済の仕組みや消費者行動へと関心を広げることができます。

子どもたちは、音楽に感動し、動画を見て、商品を選びながら日々を過ごしていますが、
その一つひとつが、実は学問の成果によって成り立っているものです。

それを「勉強とは別のもの」として切り離してしまうから、
「何の役に立つのか」という問いが生まれてしまうのではないでしょうか。

だからこそ、「役に立つかどうか」を未来に求めるのではなく、
「すでに役立っている現実」を出発点にするだけでも、違ってくると思います。

学問はその現実を説明するための言語であり、道具です。

先に道具を渡すのではなく、まず「なぜだろう」という感覚を立ち上げ、
その後に道具を手渡すという順序に変えるだけで、学びの意味が大きく変わります。

みなさんも、身近な題材から、いろんな切り口を考えてみませんか!

【今回のまとめ】
・「学びが将来どう役立つか」ではなく「今すでに役立っている」ものを学びへつなぐ
・身近な疑問や心の動きを、学問に接続する視点を

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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