【Vol.1016(2026.06.17)】恐怖マネジメントで子どもは伸びない

先日、保護者面談の余談の中で、
生徒さんのお母さまからこんなお話を聞きました。

担任の先生が、教室にある個人ロッカーを整頓できてない生徒に対して、
みんなの前で『●●と●●のロッカーはまったく整頓されていない』と
名指しでつるし上げにするのだそう。

しかも、先生が言うのではなく生活委員に指示して「言わせている」とのこと。

さらに、授業参観時に先生が求めている答えと違うことを言ったら、
すごく不機嫌な顔になるので、みんなビビって縮こまっているとも。

まあ、典型的な恐怖統治型の先生なのでしょうね。
まだこんなことしている先生もいるのかと、半分呆れて、半分ドン引きの気分です。

これで子どもたちが伸びるとでも思っておられるのでしょうか。

たしかに40人近くいるクラスをまとめるのは、先生も大変です。
私はできる自信がありません(だから個別指導を選びました)。

クラスをまとめるには、高い技術もノウハウも必要だと思います。

しかし、学校教員という仕事を選んだのであれば、
やはり押さえつけによる恐怖マネジメントではなく、
子どもたちが意欲的で前向きに協力してくれるクラス作りを目指してほしいものです。

自分(先生)が求めている答えが返ってこなくても、
「いい考えだったね。ナイス!」「その考え方は先生も思いつかなった。勉強になるよ」など、
言い方ひとつでいくらでも生徒さんの自己肯定感をアップできるはずです。

もしかしたら、塾でも似たような恐怖マネジメントが行われているかもしれません。
いや、私教育であるぶん、環境的には塾のほうが起こりやすいとも言えます。

昔は、いわゆる“スパルタ塾”もたくさんありましたしね。

そこで今回は、こうした恐怖マネジメントに
どんなデメリットがあるかを考察してみたいと思います。

Geminiと壁打ちしながら、下記の7点にまとめてみました。

1.指示待ち人間の育成

子どもたちは「怒られないこと」「罰を避けること」だけを目的に行動するようになります。

その結果、自分で考えて行動する意欲が失われ、
常に先生の顔色を伺い、指示がなければ何もできない
「指示待ち」の姿勢が定着してしまいます。

  1. 信頼関係の崩壊と、「隠す」ことが前提のメンタリティ

当然ながら、先生と生徒の間の信頼関係は成立しません。
単に恐怖で押さえているだけですから、当たり前ですよね。

生徒は先生を「助けてくれる存在」ではなく「脅威」と見なすため、
ミスやトラブルがあった際に、怒られるのを恐れて嘘をついたり、隠したりします。

そのため、いじめや悩みの早期発見が遅れるリスクも高まります。

  1. 学習意欲(モチベーション)の低下

脳科学的にも、恐怖や強いストレスを感じている状態では、
脳の記憶や学習をつかさどる部分(海馬など)の働きが低下することが分かっています。

「間違えたら叱られる」という恐怖心は、知的好奇心や挑戦する意欲を奪い、
結果として学力の向上を妨げます。

  1. 思考が硬直化し、創造性が押さえられる

「正解(先生の望む答え)」を出す」ことだけが自分の“安全”を保証する形になるため、
子どもたちにとって、ユニークなアイデアを出したり、新しい方法を試したりすることは
実質上のリスクでしかなくなります。

創造性や批判的思考力(クリティカルシンキング)も育ちにくくなるでしょう。

  1. メンタルヘルスへの悪影響

日常的に恐怖や緊張にさらされると、
子どもたちは過度なストレスを抱え、自己肯定感も著しく低下します。

これが不登校、抑うつ状態、過度の不安症など
メンタルヘルスの悪化につながるケースは少なくありません。

  1. 反発・反抗の気持ちが歪んだ形で表面化する

表面上は恐怖で押さえつけられていても、
子どもたちの心の中には不満や怒、敵意が蓄積されているのは当然です。

それが、先生の見ていないところでの問題行動を引き起こす可能性があります。

例えば「陰湿ないじめ」「器物破損」「ネット上での誹謗中傷」など、
うっぷんのはけ口が歪んだ形でアウトプットされるのです。

また、抑圧された反動で、卒業後や進級後に荒れてしまうケースもあるそうです。

  1. 間違った人間関係の学習(連鎖)

学校は社会性を学ぶ場でもあります。

そこで「強い者が力や恐怖で人間を動かす」という手法を日常的に見ていると、
それが正しい人間関係の築き方だと誤解してしまいます。

その結果、自分が上の立場になったときに、
後輩や、将来の部下・家族に対して同じように恐怖で支配しようとするリスクがあります。

パワハラやDVが連鎖するのは、そういうことかもしれませんね。

いかがでしょうか?
ちょっとまとめただけでも、これだけたくさんの問題点が出てきます。

ただ今回のケースについて、「けしからん先生だ!」と批判するだけでは解決になりません。

先生の立場で「なぜこんなことをしてしまうのか」を考えることも大切です。

そもそも、学校の先生になろうなんて思う人は、
優しかった恩師に憧れて教員を目指したとか、子どもが大好きだとか、
原点はきっと素晴らしいものだったはずなんですよね。

想像するに、最初は優しく対応しようとしたもののうまくいかず、
「クラスをまとめねば」という義務感ばかりが先だってしまって、
無意識に恐怖マネジメントの即効性に行きついてしまっているのかもしれません。

見せしめなど、恐怖による支配は集団を一斉にコントロールしやすいとも言えます。

また、そういったクラスは外から見ると
「挨拶が徹底している」「キビキビと動く」「一言も私語をしない」といった、
非常に規律正しい、優秀な集団に見えることがあります。

そのため、事情を知らない外部の人間(保護者さんや他の教員、地域住民など)から
「素晴らしい指導力だ」と誤解され、評価されてしまうことに
快感を覚えてしまっているのかもしれません。

私たちが見えない・知らない部分で、学校の先生も大変なことが多いのでしょう。

また、多くの中学校は体育大会(体育祭)があると思います。

大会前の1週間は、ほとんどの時間を練習や予行に取るような
気合の入った学校もあります。

体育が好きな生徒さんや、みんなでワイワイするのが得意な生徒さんからすると
お祭りみたいな形で楽しいですよね!

しかし、体育が苦手な生徒さんや団体行動が苦手な人、
特性上、体育大会を参加しにくい生徒さんなどもたくさんいると思います。

そういう人からすると、体育大会前の学校生活は地獄でしかありません。

自分のクラス(チーム)を優勝させたい、みんなが前向きに協力し合う空気を作りたいと、
力が入りすぎて叱咤激励しすぎてしまう担任の先生もいるはずです。

何とか学校にいっている生徒さんが、苦手な体育でうまくできず、
みんなの前でと責められたりでもしたら、翌日から不登校確定です。

違法とは言わないまでも、子どもを傷付け、意欲を低下させる指導のことを
「教室マルトリートメント」と呼ぶそうです。

不登校の生徒さんが増えているのは、コロナの影響も大きいと思いますが、
こういった学校内でのできごとも要因になっていると感じます。

以前(だいぶ前ですが)、音楽クリエイター・ヒャダインさんが
寄稿された記事も話題になりました。
https://www.jiji.com/jc/v8?id=202502taiiku-team&p=202502taiiku-team-taiiku02_680

当メルマガでもこれをもとに、教科を強化として評価対象にするから
体育嫌いが生まれるのではないか、といった趣旨の記事をお届けしました。

今回事例として取り上げたのは、あくまで一部の先生のお話です。
しかしその一部の先生も、そうならざるを得なかった環境があったのかもしれません。

そうであれば、学校という組織の仕組みもアップデートしていかないといけませんし、
先生方も創意工夫やスキルアップができる環境を作れるようにすべきです。

場合によっては、学校という枠に捉われることなく、
フリースクールなどの第3の場所(サードプレイス)を
気軽に選べる世の中になっていくといいですね。

もし学校がある種の機能不全を起こしているのなら、
生徒さんが主体性や自主性を持ち、自己肯定感を育めるよう、
せめて塾でしっかりフォローしていきたいところです。

間違っても、私たちの塾が恐怖マネジメントにならないように気をつけていきましょう。

もしかすると無意識に恐怖マネジメントしているかもしれませんよ……

【今回のまとめ】
・恐怖マネジメントはデメリットばかり
・生徒を「管理」「統率」する発想や仕組みから抜け出す

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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