【Vol.648(2022.12.16)】生徒に合わせた「真の」個別指導を行えるように

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、先日こんなニュースがリリースされましたね。

【公立の小中学生8.8%に発達障害の可能性 文科省調査】
https://news.yahoo.co.jp/articles/ad52bce87f8aa05556228877c1d4fa91fd1c4333

ちなみに、エビデンスの資料はこちらです。

【通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について/文科省】
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2022/1421569_00005.htm

調査は学校の先生の主観によるもので、専門家の診断などに基づくものではないため
それを「8.8%に発達障害の可能性」と言ってしまうのは若干ミスリードのような気もしますが、
確かに、私も子どもたちと接していて
「もしかして発達障害(グレーゾーン呼ばれる部分も含め)ではないか?」
と感じるケースは年々増えてきたように思います。

思い込みや過剰反応である可能性も含めて
あくまで個人的な感想にすぎないのですが、みなさんはいかがですか?

ただ、仮に発達障害が、学校という集団の中での
生きづらさや学びづらさを招いているのなら、
従来の学校教育の形が今の時代に合わなくなっているのは強く感じます。

明治以来、日本の学校教育は
「同じ年齢の子に」「同じ内容を」「同じスピードで」「同じ方法で」教える形を取ってきました。

このやり方には限界がきているのではないかと思うのです。

多様性や個性を重んじる時代だからこそ、学校も変化しないといけないはずです。

確かに、近年は学校でも学びの個別最適化が進んできました。

しかしそれは、主に学力を基準とした個別最適化です。

AIドリルなどを活用して、一人ひとりに適したレベルや
個々の課題に応じた演習を行うことなどがそれにあたります。

自由進度学習などもそうですね。

一方で、発達障害などを前提とした個別最適化は
まだまだ整備が進んでないように感じます。

例えば通常学級と特別支援学級だけでなく、
その間をカバーできるような学級があるだけでも……と思うことも多々あります。

「特別支援が必要か否か」という2つの学級だけだと、選択肢が狭まります。
特別支援学級に入るほどではないが、通常学級には馴染めない、という子もいますしね。

もちろん、地域や学校によって工夫をされているところもあるのは事実です。

不登校支援などでは、不登校特例校のほか、校内フリースクール、
メタバース登校という選択肢も出てきました。

ただ、それでも発達障害支援に専門性を持つ先生方の数は
圧倒的に不足しているというデータもあり、なかなか対応しきれないのでしょうね。

一方的に「学校はダメだ!」「遅れている!」と断じることもできません。

そしてこうした問題は、塾も同様です。

子どもたち個々の特性を考慮しない指導は、
本来の「個別指導」の良さを発揮できていないのではないかと思うからです。

もともと個別指導塾は、
集団塾の体制やスピード感が合わない子たちのために生まれました。

しかし冷静に考えてみると、その個別指導塾ですら、
多くの場合、どの生徒さんにも同じテキストを使い、同じ進め方をしているケースが多いです。

自戒も込めて厳しく表現するなら、これは「個別指導」ではなく、
単に学校と同じようなマス教育を、少人数で行っているだけだとも言えます。

生徒さんの学力やペースなども考慮した上で、一人ひとりカリキュラムを組んでいくことが
本当の個別指導のあるべき姿ではないかと考えます。

例えば、生徒さんの学力や理解度、あるいは発達障害を含む個人の特性などによって、

・使用するテキストの種類を変える(Aさんは○○ワーク、Bさんは△△テキスト)
・テキストでやるべき内容や範囲を変える(Aさんは標準問題まで、Bさんは応用問題まで)
・宿題の量を変える(Aさんは1日1ページ、Bさんは1週間で2〜3ページ)
・授業回数を変える(Aさんは英語週1回、Bさんは英語週2回)
・予習か復習か(Aさんは予習中心、Bさんは復習中心)

などをカスタマイズしていくことが本来の個別指導に必要な要素ではないでしょうか。

弊塾でもできる限り、生徒さん一人ひとりの学力や理解度に合わせた
カリキュラムを組むように心がけています。

テキストも2種類に分け、さらにテキストの中身も生徒さんによって
「ここはする」「ここはしない」を分けています。

この時点で2×2=4パターンのカリキュラムとなるので、より幅が広がりますよね。

また弊塾では、「1回目に正解した場合は赤○、間違って直しをした場合は青○」
というルールがありますが、生徒さんの現状をふまえて
赤○が全体の70%前後になるようなテキストを渡します。

「サクサク進めることができる」「やる気を維持できる」からです。

例えば赤○が20〜30%しかつかないなど、「できない自分」を見せつけられてばかりでは、
生徒さんのやる気もどんどん失われてしまいます。

映像授業を使われている塾さんも多いかと思いますが、
特に勉強が苦手(テストで平均点以下)な生徒さんに関しては注意が必要です。

勉強が苦手な生徒さんほど、一方的に流れてくる映像教材を理解するのが難しかったり、
単に見ているだけで何も頭に残らないという場合があります。

学校の授業を理解できていない生徒さんに対して映像教材を使っても、
学校の授業が映像に置き変わっただけ……となる可能性もあるでしょう。

映像を導入するのであれば、理解できているかをチェックする仕組みなど、
こちらがきちんと管理できる体制が必要です。

生徒さんによって見る映像教材を変えるなどの工夫をしているのであれば、
一人ひとりに合わせた個別指導の形と言え、効果が出る仕組みと言えそうです。

いかがでしたでしょうか。

多様性と個別最適化の時代だからこそ、
いま一度個別指導塾の本質を見直してみませんか。

もし、もっと一人ひとりの特性を見極めて本当の意味で個別最適化ができるなら、
個別指導塾は生徒さんの個性を最大限に生かせる存在になり得るはずです。

発達障害への対応も、仮に学校ができなくても、個別指導塾ならできるはずなんです。
もっと言えば、個別指導塾だからこそやるべきなのかもしれません。

私自身も発達障害(グレーと呼ばれる分野も含め)に関して興味関心もありますし、
それで悩んだり苦しんでいる方に何かできるサポートを行いたいと思っています。

弊社主催のセミナーでも、こういった分野も取り扱いたいと考えておりますので、
ご興味のある先生方は一緒に勉強していきましょう!

【今回のまとめ】
・個別指導だからこそできるカリキュラム作りが必須
・発達障害という分野に対して学ぶ姿勢を

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安多 秀司のアバター 安多 秀司 株式会社リアル・パートナーズ代表

大学卒業後、京都・滋賀・大阪・兵庫等に教室を持つ「成基の個別教育ゴールフリー」に入社。
最年少教室長として、川西教室(兵庫県)で3年間務める。その後、「スタンダード家庭教師サービス」を運営する株式会社スタンダードカンパニーに入社。「個別指導塾スタンダード」の立ち上げに尽力し、事業責任者として30数教室の 新規展開を行う。
その後独立し、平成20年7月「個別教育フォレスト」を設立。開校1ヶ月で35名の入会があり、わずか1ヶ月で損益分岐点を超える。現在はキャンセル待ちの塾として地域No.1の個別指導塾を運営している。
今でも現場主義を貫き、常に通塾中の顧客に対して満足度を高める工夫を実践している。

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